NTTグループが、厚生労働省が、退職者の年金額の減額を承認しなかったのは不当だとして
不承認処分の取り消しを求めていた確定給付企業年金をめぐる訴訟
(確定給付企業年金の年金額の減額=規約の変更には厚生労働省の承認が必要と同法で定めている)で
NTTの敗訴が確定した。
1審東京地裁は「NTT東日本・西日本は年1000億円前後の利益を継続的に計上しており、
経営が悪化したとは到底認められない。
年金廃止を避けるための次善の策として減額がやむを得ないとはいえない」として、
NTTの訴えを退けたが、2審東京高裁もこれを支持していた。
NTTは上告していたが、
上告審でも最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は、NTT側の上告を退ける決定をした。
この裁判で争われていた「確定給付企業年金(法)」とは、どんな年金か、少し解説してみたい。
現在、企業に勤めている人の公的年金は、2階建てである。
65歳から受給できる国民年金(基礎年金)―自営業者の方は、
この基礎年金のみで毎月約1万5千円の掛金を40年間かけ続けて、
受け取れる年金額は、最高月額約6万6千円である―が土台=1階部分にある。
あまりに少ないですね。
2階は、厚生年金である。
現在は、報酬比例部分と呼ばれるものが60歳から受給できる。
これも1961年4月2日以後(男子。女子は1966年以後)に
生まれた方は65歳からしか受給できなくなる。
確定給付企業年金は、さらにその上に、いわば3階部分として、
大企業などで、労働者も掛金を負担して、企業が一定額を上乗せして積み立て、
60歳以上65歳未満から公的年金にプラスして支給される年金(企業年金とよばれる)の1つである。
確定給付企業年金は、企業が勝手に制度設計できるものではなく、
確定給付企業年金法という法律に基づいて運営される。
同企業年金は、
既存の確定給付型の年金の受給権の保護を主な目的として制定された(2001年6月成立、02年2月施行)。
同法の施行で確定給付型の企業年金は、
(1)厚生年金基金、
(2)同基金から代行部分を除いた基金型企業年金、
(3)税制適格年金を改良した規約型企業年金―の3つに再編された。
同企業年金は、その名前「確定給付」からも、将来の給付額が前もって約束されていることに特長がある。
「事業主が従業員と給付の内容を約し、
…従業員がその内容に基づいた給付を受けることができるようにするため」(同法1条)、
すなわち、受給権の保護を目的として制定された。
そして、給付の減額につては、
「(減額しようとするときは…減額しなければ)
確定給付企業年金の事業の継続が困難となること
その他の厚生労働省令で定める理由がある場合において、(定める手続きを経て)」
(同法令4条2号)と規定されている。
給付減額の理由については、「実施事業所の経営の状況が悪化したことにより、
給付の額を減額することがやむを得ないこと」(規則5条2号)
「給付の額を減額しなければ、
…事業主が掛金を拠出することが困難になると見込まれる…こと」(規則5条3号)
と明確に定められている。
上記した法の趣旨からも、判決は当然の結論と言える。
それにしても、毎年1000億円もの利益を出し、経営が大きく悪化してもいないのに、
加入時に示した年金額を一方的に減額しようとするなどは、
NTTグループはあまりにも強欲にすぎる。
これは、退職者にたいする退職したあとの実質の賃下げと言わなければならない。
こんな理不尽は許されるものではない。
NTTグループは、長年、企業の発展に尽くしてきた労働者をなんと思っているのだろう。
NTTは、現在働いている労働者に対しても、
退職強要、遠隔地への強制配転、派遣への置き換えなど、無法で冷酷な仕打ちを繰り返してきた。
労働者を利益を生み出す機械のようにしかみない企業に未来はないと思う。
日本経済の成長にとっても、マイナスしかもたらさないし
グローバルな企業間競争で生き残るうえでも、
従業員を人として扱わない冷酷な労務管理を続けている企業は、
いずれ、落後者となるだろう。
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