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ブラック企業規制法案は法律のどの条文を改正するものか

日本共産党の「ブラック企業規制法案」は、労働法のどの法律のどの条項を改正しようとしているのか



日本共産党の「提案にあたって」と「改正要綱」
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日本共産党が改正を提案しているのは、次の条文です

1、長時間労働の是正
 ① 労働時間を正確に把握・記録し、職場から長時間・ただ働き残業をなくす仕組みをつくる。
  → (労働基準法の一部改正第108条関係) 

◆ 労働基準法
(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)
最終改正:平成二四年六月二七日法律第四二号

(賃金台帳)
第百八条  使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

※筆者感想
賃金台帳だけでなく、「使用者は、労働時間管理台帳を、各事業場ごとに調製し、都度遅滞なく記入し、労働者等(労働者の同意がある家族等も含む)が申し出たときは閲覧させなければならない」とでもするのでしょうか。

 ② 年間残業時間の上限を360時間にするとともに、「連続出勤」も制限する。
  → (労働基準法の一部改正第36条関係)

◆労働基準法
(時間外及び休日の労働)
第三十六条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
 2  厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
 3  第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
 4  行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

※筆者感想
労働基準法は、1週40時間、1日8時間労働制・週休制を原則としている。残業に割増賃金を支払うのは、この原則を破ったペナルティーの意味がある。しかし、現実は、この三六条により、労使協定を締結すれば、厚労省が労災判定の基準としている月100~80時間以上の残業も認められ労働時間は青天井となってしまう。労働基準法三六条による労使協定が、過酷な長時間労働を合法化する道具となっている。これを最大年間360時間(労働省告示「労基法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度に関する基準」)に制限しようとするもの。

次に、形式的には最大48日連続勤務も可能な4週をとおして4日の休日を与える規定も日本共産党の提案ではこの36条の改正で対応するとなっています。

労基法第35条は次のように規定しています。

(休日)
第三十五条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
 2  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

この第2項削除という提案でないのはなぜかな と思います。

③ 連続11時間の休息時間を保障する
 → (労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正 2条関係)

◆労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)
 (事業主等の責務)
第二条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
 2 事業主は、労働時間等の設定に当たっては、その雇用する労働者のうち、その心身の状況及びその労働時間等に関する実情に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講ずるように努めるほか、その雇用する労働者のうち、その子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者(転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とする労働者その他これに類する労働者をいう。)、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮してこれを行う等その改善に努めなければならない。
 3 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する労働者の労働時間等の設定の改善に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならない。
 4 事業主は、他の事業主との取引を行う場合において、当該他の事業主の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けない等取引上必要な配慮をするように努めなければならない。

※筆者感想
この法律は、「事業主の自主的努力を促進する」ことを目的としたものです。上記第2条をどう改正しようとしてるのかもつかみがたいというのが率直な感想です。日本共産党はなぜ、労働基準法に最低基準として例えば、第三二条(労働時間)に、「使用者は、就業から次の始業までのあいだに連続11時間の休息を保障しなければならない」とせず、「企業は、努力するものとします」との提案としたのか。中小企業等の実情に配慮したものかな。

労働基準法(労働時間)
第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
 2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。


④ 「サービス残業」が発覚したら残業代を2倍にする制度をつくる。
 → 同上特別措置法の一部改正 

◆第15条を新設

※筆者感想
労働基準法には、労働者が裁判に訴えた時に限り、あくどい違法の場合には、裁判所は使用者に、残業代と同額の付加金を支払わせる規定がある。

(付加金の支払)
第百十四条  裁判所は、第二十条(注=解雇予告手当)、第二十六条(注=使用者の責めに帰すべき休業手当)若しくは第三十七条(注=時間外労働・休日労働に対する割増賃金)の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項(注=有給休暇)の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。

この「倍返し」の提案は実現すれば、残業代不払いを根絶するうえで絶大な効果を持つ、「ブラック企業規制法案」の目玉といえる提案だと思う。実現すれば、残業をなくし雇用を増やす企業が増えるだろうし、労働者が不払い残業を告発するインセンティブとなる。
 けれど、これが同上「特別措置法」改正で対応する提案となったのはなぜだろう。

2、離職者数を公表し、就職情報・広告の適正化をはかる

① 離職者数を公表する
 → (職業安定法の一部改正 第41条関係)

◆職業安定法
(昭和二十二年十一月三十日法律第百四十一号)
最終改正:平成二四年八月一日法律第五三号

(許可の取消し等)
第四十一条  厚生労働大臣は、第三十六条第一項の許可を受けて労働者の募集を行う者又は同項の規定により労働者の募集に従事する者がこの法律若しくは労働者派遣法 (第三章第四節の規定を除く。次項において同じ。)の規定又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反したときは、同項の許可を取り消し、又は期間を定めて当該労働者の募集の業務の停止を命ずることができる。
 2  厚生労働大臣は、第三十六条第三項の届出をして労働者の募集を行う者又は同項の規定により労働者の募集に従事する者がこの法律若しくは労働者派遣法 の規定又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反したときは、当該労働者の募集の業務の廃止を命じ、又は期間を定めて当該労働者の募集の業務の停止を命ずることができる。

※筆者感想
これは、職業安定法41条関係の改正ではなく、5条の誤記ではないかと思う。下記第5条に、政府は「離職者数を公表し、就職情報・広告の適正化をはかる」との項を追加するのがいいのでは。

◆職業安定法
(政府の行う業務)
第五条  政府は、第一条の目的を達成するために、次に掲げる業務を行う。
一  労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図ること。
二  失業者に対し、職業に就く機会を与えるために、必要な政策を樹立し、その実施に努めること。
三  求職者に対し、迅速に、その能力に適合する職業に就くことをあつせんするため、及び求人者に対し、その必要とする労働力を充足するために、無料の職業紹介事業を行うこと。
四  政府以外の者の行う職業紹介、労働者の募集、労働者供給事業又は労働者派遣法第二条第三号 に規定する労働者派遣事業及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律 (昭和五十一年法律第三十三号。以下「建設労働法」という。)第二条第十項 に規定する建設業務労働者就業機会確保事業(以下「労働者派遣事業等」という。)を労働者及び公共の利益を増進するように、指導監督すること。
五  求職者に対し、必要な職業指導を行うこと。
六  個人、団体、学校又は関係行政庁の協力を得て、公共職業安定所の業務の運営の改善向上を図ること。
七  雇用保険法 (昭和四十九年法律第百十六号)の規定によつて、給付を受けるべき者について、職業紹介又は職業指導を行い、雇用保険制度の健全な運用を図ること。

② 休職者からの問い合わせに答える制度をつくる
 → (職業安定法の一部改正 第51条関係)

◆職業安定法
(秘密を守る義務等)
第五十一条  有料職業紹介事業者及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由なく、その業務上取り扱つたことについて知り得た人の秘密を漏らしてはならない。有料職業紹介事業者及びその代理人、使用人その他の従業者でなくなつた後においても、同様とする。
 2  有料職業紹介事業者及びその代理人、使用人その他の従業者は、前項の秘密のほか、その業務に関して知り得た個人情報その他厚生労働省令で定める者に関する情報を、みだりに他人に知らせてはならない。有料職業紹介事業者及びその代理人、使用人その他の従業者でなくなつた後においても、同様とする。

※筆者感想
上記の条項がハローワークなどが「企業の違法行為などへの問い合わせに答えない」原因となっているのでしょうか。しかし、この条は有料職業紹介事業者等民間事業者は、「秘密を守らなければならない」とする条です。これも正しくは、51条の3の誤りであると思われる。51条と51条の3は別の条です。

職業安定法
(相談及び援助)
第51条の3 公共職業安定所は、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に関する事項について、求職者等の相談に応じ、及び必要な助言その他の援助を行うことができる。

③ 賃金の内訳を明記させ、誇大広告、虚偽記載をやめさせる
 → (職業安定法の一部改正 第5条関係)

※筆者感想
共産党の「要綱」には5条関係の改正とあるが、これは、5条の3関係だと思われる。条文5条と条文5条の3は違う条項である。また、「誇大広告、虚偽記載をやめさせる」法改正は、第42条関係の改正となると思われる。

職業安定法
(労働条件等の明示)
第5条の3 公共職業安定所及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者(第39条に規定する募集受託者をいう。)並びに労働者供給事業者(次条において「公共職業安定所等」という。)は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
《追加》平11法085
2 求人者は求人の申込みに当たり公共職業安定所又は職業紹介事業者に対し、労働者供給を受けようとする者はあらかじめ労働者供給事業者に対し、それぞれ、求職者又は供給される労働者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
《追加》平11法085
3 前2項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により行わなければならない。

職業安定法第5条の3に、「賃金の内訳を明記すること。また、誇大広告、虚偽の記載をしてはならない」旨を追加すれば、共産党提案の趣旨は法定されるのではないか。

労働基準法には、労働契約にあたって労働条件の明示義務があります。パート労働者にも当然明示しなければなりません。あまり改正事項を広げたり、規制を強化するするのは実現性を考えると考えものかもしれませんが、募集から労働契約、そして実際の労働条件と一連の流れがあります。整合性も考える必要があると思います。

(労働条件の明示)
第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
 2  前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
 3  前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働基準法の「労働契約を解除することができる」=企業を退職することができるという規定だけでは、労働条件明示義務を担保することはできないでしょう。実効性を持たせるには、「約束とちがう」労働条件に対しては、「倍返し」規定等かなりきついペナルティーを課す必要がある気がします。

(募集内容の的確な表示)
第42条 新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法により労働者の募集を行う者は、労働者の適切な職業選択に資するため、第5条の3第1項の規定により当該募集に係る従事すべき業務の内容等を明示するに当たつては、当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならない。

上記第42条に「誇大広告、虚偽の記載をしてはならない」旨を追加するのがいいのでは。

3 パワーハラスメントをやめさせる
 → (労働安全衛生法の一部改正 第71条関係)

◆労働安全衛生法
(昭和四十七年六月八日法律第五十七号)
最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号

(国の援助)
第七十一条  国は、労働者の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るため、必要な資料の提供、作業環境測定及び健康診断の実施の促進、事業場における健康教育等に関する指導員の確保及び資質の向上の促進その他の必要な援助に努めるものとする。
2  国は、前項の援助を行うに当たつては、中小企業者に対し、特別の配慮をするものとする。

※筆者感想
この「パワハラの防止」が立法措置がもっとも難しそう。セクハラについては、まがりなりにも男女雇用機会均等法に企業が防止措置をとることが法定されていますが、パワハラについてはまだ研究段階のようです。やはり、行政が相談窓口(機関)を設置し、パワハラをおこなった企業への行政の助言、指導、勧告、そして公表の措置を強めることからはじめるということでしょうか。

 逐条的に検討してきましたが、日本共産党の「ブラック企業規制法案」の提案は、必要最小限の対策を盛り込んだもののようです。「まず第一歩を踏み出しましょう」という感じです。基本的には、世論、労働組合等労働者の声によって、ブラック企業を包囲しようとする提案であり、同時に成立・実現すれば、労働環境は一変すると思われるポイントをついた提案だと思います。


日本共産党の「ブラック企業規制法案」についての私の感想的評価は
 → ブラック企業の目に余る横暴にストップをかける法案



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ブラック企業の目に余る横暴にストップをかける法案



日本共産党が「ブラック企業規制法案」を今国会開会日に国会に提出した。先の参議院選挙で躍進して得た議案提案権をさっそく活用した。
日本共産党の説明を聞いて、これは安倍内閣が推し進めようとしている労働環境の悪化につながる労働法制の規制緩和へのカウンター法案といえるたいへんすぐれた提案(対案)だと思った。実現すれば、労働者とくに若者の労働条件・労働環境を改善するうえで絶大な効果を持つと思われる。緊急に必要な事項に的をしぼったわかりやすく非常にすぐれた提案だと思う。

日本共産党の「提案にあたって」および「法案要綱」は ← クリック

この提案は、けっして共産主義的・社会主義的な内容ではなく、あまりにもひどい現在の日本の労働環境を、せめてヨーロッパなどの先進資本主義国並みにまで改善しようとするものと思える。
改善提案もこれまでの政府が「努力義務」として法律・施行規則等に盛り込んできた内容だと思う。
考えてみれば、労働者が人間としての最低限の労働と生活を営むためには、あまりにも当然の、誰もが賛成できるものだ。日本共産党も提案のなかで、経営者にも議論に加わってほしいと呼びかけている。
 安倍内閣の「企業の競争力強化」優先の政策を選ぶのか、日本共産党のまじめに働く人が人間らしい生活を営むことができる政策を選ぶのか、国民的議論が巻き起こることを心から願っている。
 日本共産党が今回、提案した「ブラック企業規制法案」を一読して、いくつか質問したいことがありますが、それは次回に書きたいと思います。

つづきは 「日本共産党の「ブラック企業規制法案」は、労働法のどの法律のどの条項を改正しようとしているのか


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