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 岐阜県多治見市で事務所を開いている社会保険労務士の永江正道と申します。
 経営者も社員も笑顔あふれる会社づくりを全力でサポートしています。
 働く人が生きがいを持てる会社・社会をみなさんとごいっしょに築いていきたいと思います。


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派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約成否の判断基準(積水ハウス事件判決から)

派遣労働者と派遣先の黙示の労働契約成否の判断基準(積水ハウス事件判決から)



労働判例研究会(岐阜県社労士会有志)で派遣労働に関連した2つの裁判例を検討した。

一つは、①積水ハウス事件(大阪地裁平成23年1月26日判決)であり、
二つは、②ラボール・サービス事件(名古屋高裁平成19年11月16日判決)である。

テキストは、積水ハウス事件が「労働経済判例速報」(平成23.3.30 no.2098)
ラボール・サービス事件が「労働判例」(2009.6.15 No.978)を使用した。

①事件の争点の一つは、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否であった。
判決は、黙示の労働契約の成立を認めなかった。

原告派遣労働者が派遣先で従事していた業務は、
パソコンなどの事務用機器の操作の業務(「政令5号業務」)である。

判決は、次のように理由を述べている。
派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否を判断するに当たっては、
派遣元に企業としての独自性があるかどうか(その内容は、労働者と派遣先との間の事実上の使用従属関係、
労務提供関係、賃金支払関係があるかどうか等)を総合的に判断して決するのが相当である。
すなわち、派遣元が形式的な存在にすぎず、実質的には派遣先が派遣労働者の採用、
賃金額その他の労働条件を決定し、配置、懲戒を行い、
派遣労働者の業務内容・派遣期間が労働者派遣法で定める範囲を超え、
派遣先の正社員と区別しがたい状況となっており、派遣先が、派遣労働者に対し、労働給付請求権を有し、
賃金を支払っている等派遣先と派遣労働者の間において、
事実上の使用従属関係があると認められる場合には、
黙示の労働契約が成立していると認めるのが相当である。

私は、当該判決は、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否の判断基準を、
次の点に置いたものだと解釈する。
 労働契約が派遣元との間に成立しているのか、
派遣先との間に成立しているかの判断は使用従属関係の実態によって判断される。
すなわち、派遣元がダミーのような形式的存在であるのか、
独立した会社としての実質を備えているかで判断される。

現行法に忠実な、しかも労働法解釈にとって重要な実態から判断している点で良識的な判断だと言える。
(もっとも、事実認定について、原告、被告どちらの主張が真実かは私にはわからないが)
但し、現在の労働者派遣法は、使用者(派遣先)は、労働者を雇用せず(雇用しているのは派遣元)、
使用従属関係に置き、働かせることを合法化したものであり、
派遣先責任(使用者責任)の強化が立法的に必要だと考える。

この裁判のもう一つの争点は、
派遣労働者が従事していた業務が派遣期間制限のない政令26業務であったのかどうかの判断である。

判決は、原告労働者が従事していた業務は、政令5号業務ないしそれに付随する業務であり、
それ以外の業務の割合が、就業時間の1割に満たないものであったと推認されるとして、
原告の主張を退けた。

パソコンを使った業務が、専門的知識や技能を必要とする業務であるかが、
2008年秋のリーマンショック後に派遣切りが横行したとき、政治問題となり、
厚生労働省は、派遣労働者の業務が5号業務と言えるか否かについての判断基準をQandAで通知した。

それによると、従事している業務の内容を、本業務と付随業務と付随的業務の3つに区分し、
本業務と付随業務以外の業務が1割を超えてはならないとしている。

判決は、この1割という基準から、原告労働者の業務は、5号業務であったと推認し、
原告が主張した「5号業務を逸脱し、派遣制限期間を超えて違法派遣状態となっており、
派遣元との派遣労働契約は、公序良俗に反し無効。
であれば、派遣先が原告労働者を働かせている法的根拠は、
派遣労働者と派遣先との間の黙示の労働契約の成立以外にない。
また、原告と派遣元との関係は形式的であり、実質的に、採用したのも、雇用者も派遣先である。」
との事実も法理も採用しなかった。

この原告の論理は、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約を認めた
「松下プラズマディスプレイ事件」大阪高裁判決(2008.4.25)が判示した論立てである。
大阪高裁判決は、最高裁判決(第2小法廷2009.12.18)で覆された。
最高裁判決は、偽装請負や派遣期間制限違反など違法派遣状態の事実があったとしても、
特段の事情のない限り、そのことだけで派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約が、
また、派遣元と派遣先との間の労働者派遣契約が直ちに無効となるものではない、と判示している。

当該積水ハウス事件判決も、この最高裁判決を引用し、
「仮に原告が従事した業務が政令26業務に該当せず、
また、それに従った派遣期間の制限違反等の労働者派遣法違反の事実があったとしても」
労働者と派遣先との間に黙示の労働契約が成立するものではない、と判示している。

②ラボール・サービス事件については、次回にします。
         ↓
派遣労働者の再雇用拒否を解雇権濫用と判断した裁判例

松下プラズマディスプレイ事件(社労士永江記事) ← クリック


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退職者にたいする自社企業年金の減額は認められるか

退職者にたいする退職年金(自社企業年金)の減額は認められるか



先日、岐阜県社会保険労務士会の有志で行っている
「労働判例研究会」に参加した。
研究会のおさらいをしてみたい。

テーマは、退職年金の減額問題、
松下電器産業(年金減額)事件(大阪高裁平18.11.28判決)であった。

テキストは
(1)労働判例百選[第8版](80~81頁)
(2)労働判例2007.4.15(No.930)13~25頁

すでに企業を退職したものの企業年金の減額がなぜ、
どのような場合に許されるのかが、私の問題意識であった。

「使用者が、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより労働者の不利益に
労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」(労働契約法第9条)が原則である。

ただし、次条の場合はこの限りでないとし、同法10条で、その要件として以下を揚げている。

「変更後の就業規則を労働者に周知させていること」と
①就業規則の変更が労働者の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更にかかる事情
に照らして合理的であること。

現役労働者についての将来の企業年金の減額は、まさしく労働条件の不利益変更である。
しかし、すでに退職したものに、この法理をそのまま適用することはできない。

大阪高裁は、退職者への企業年金の減額を認めた。
その判旨は、次のようである。

()福祉年金契約については、年金規程が福祉年金制度の規律としての合理性を有している限り、
その契約内容は、年金規程に拘束される(約款法理に依拠)。
()年金規程にある「経済情勢の変動」は、改定の必要性を基礎づける程度に達している必要があり、
改定の程度についても、変更の必要性に見合った最低限度のものであること(相当性)が求められる。
()会社の経営状況の悪化の程度は、年金減額の必要性と減額の程度を肯定できる状況にあった。
()年金減額の大きさは、原告退職者の生活に深刻な影響を与えるものとまでは言えないし、
年金制度の目的を害する程度のものとまでは言えないこと。
賛成者が加入者総数の95%あったこと。
説明など手続きも相当である。

()~()の判旨は、就業規則の不利益変更の要件(不利益の程度と相当性、必要性と手続き)と同じ趣旨である。

()は、現役労働者に適用する就業規則法理は、そのまま使えないが、
約款法理(一律の規律の肯定)に依拠して、減額を認めた判旨である。
もっとも、就業規則法理も約款法理に由来するとする有力な説がある。


企業年金に関する別の記事 → 確定給付企業年金裁判でNTT敗訴確定

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外国人が日本の年金を受給するには

年金相談
外国人は、日本の年金加入期間が短くても、日本国籍を取得すれば、日本の年金を受給できます(給付額は少なくなりますが)。



Q:私は韓国人で、日本に来て10年、日本人と結婚して5年になるが、はじめの2年間は夫が厚生年金に加入していました、その後、夫が会社をやめましたが、1年間は国民年金保険料を納めませんでした。
しかし、その後、今日までの2年間国民年金の保険料を納付して現在に至っています。
年齢は55歳0か月です。年金を受給することはできるでしょうか。

A:結論から申し上げれば、日本国籍を取得なされば、受給できます。
日本の年金を受給するためには、現在は、25年の被保険者期間が必要です。(「現在は」というのは、年金受給に必要な被保険者期間を10年に短縮する案がいま、検討されているからです)。
この期間は、以下の①~④の期間の合計が25年(300月)必要だということです。
①厚生年金や国民年金の保険料を納めていた期間

②サラリーマンの配偶者であった期間(3号被保険者期間)

③保険料免除期間(生活保護受給者や収入が少ない人は、申請により保険料が免除されます)

④合算対象期間=いわゆるカラ期間(主に、年金への加入が義務でなかった期間で、任意加入していなかった期間などです)

相談者(女性)の例で、受給資格が満たせるのかどうか検討してみましょう。

①の期間は2年(24月)です。
②の期間は2年(24月)です。(夫が会社をやめたけれども、国民年金保険料を納めなかった1年間は、受給資格期間に合算されません)
③の期間は、ありません。
以上の①~③期間は、合計しても4年(48カ月)で、25年(300月)には21年(252カ月)足りません。
60歳までの5年(60月)は、国民年金の強制加入期間であり、保険料を納付します。
それでも、合計9年(108月)です。その後、65歳まで任意加入したとしても14年(168月)で受給資格期間25年(300月)にはなりません。

では、この外国人の方は、60歳までの強制加入期間に納めた保険料は、納め損になってしまうのでしょうか。

こういう方の場合、いわゆるカラ期間(受給資格期間に合算できるが、年金の給付額には反映しない期間)がないかどうか検討します。

外国人の方の場合、2つのカラ期間が認められています。
昭和36年5月1日以後に日本国籍を取得した外国人であったものについて
①日本に住所を有していた期間のうち、国民年金の被保険者とならなかった昭和36年4月1日から昭和56年12月31日までの期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)。
②日本国内に住所を有しなかった期間のうち昭和36年4月1日から日本国籍を取得した日の前日までの期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)。

相談者の場合、来日が、2001年6月ですから、①は適用されませんが、②が適用されます。
来日のときが45歳です。この方の場合、韓国に住所を有していた20歳から来日した45歳までの25年間は、日本国籍を取得すれば、カラ期間と認められ、日本の年金の受給資格を取得することができるということになります。

次に、日本国籍取得の要件について、簡単にみてみましょう。

この方の場合、国籍法7条(日本人の配偶者への緩和規定)が適用されそうです。

①日本国民の配偶者である外国人で引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有し、かつ、現に日本に居所を有する者
②日本国民の配偶者である外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ1年以上日本に住所を有する者

基本的は規定は国籍法5条です。

①引き続き5年以上日本に住所を有すること。
②20歳以上で本国法で能力を有すること。
③素行が善良であること
④自己または生計を一つにする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営むことが出来ること。
⑤国籍を有せず、または帰化により日本国籍を取得したとき、従来の国籍を失うこと。
⑥政府に対し、破壊活動の企てや実行をしたことがない者。

国籍法6条は、日本と特別の関係にある外国人で、現に日本に住所または居所を有する者についての規定です。

①日本国民であった者の子。(養子は除外)
②日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有する者またはその父または母が日本で生まれた者。
③日本に引き続き10年以上居所を有する者。


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